あらすじ
AさんとJさんは古くからの友人で、2人とも子育てがひと段落した専業主婦です。少し暇になり、子供の将来の学費のために近所のハンバーガーショップでアルバイトをすることにしました。
二つの方式
このお店は珍しい制度があって、雇用方式をアメリカ式と日本式から選ぶことができます。
Aさんはアメリカ式だと時給が毎年7%アップすると聞き、アメリカ式を選びました。
Jさんは「アメリカ式はすぐにクビになる」という噂を聞いていて、なんとなく安心そうな日本式を選びました。また、毎年7%にはピンとこず、従業員のランクである”クルーレベル”を上げれば自然と時給があがるともJさんは考えていたのです。
2人は時給850円からスタートしました。
6年経ったある日
AさんとJさんは子供を都内の有名私立大学に行かせたい一心で、とてもよく働きました。2人の子供もがんばるお母さんのために必死で勉強して、無事に志望校の大学に合格することができたのです。
このとき、Aさんは接客と調理が一通りできる”Aクルー”、Jさんは店舗管理補佐の”スイング”に昇格していました。
<6年後の状況>
・Aさんの時給は1325円(役職手当+50円)です。週3日で1日5時間。時間が来たら1分も経たずにタイムカードを切って帰宅します。
・Jさんはシフト作成や在庫管理、定例会議出席などの業務も担っていますが、時給は950円(役職手当+100円)です。
・また、来年Aさんの時給は1440円に上がりますが、Jさんは950円のままです。
Jさんは自分の時給がAさんよりも低いことが気になっていましたが、子供の大学4年間の学費は稼げていたので黙って働いていました。
グローバル社会の影響1
そんなある日、Jさんは子供から「みんな留学に行っているので自分も行きたい!」と相談されました。Jさんは「3年間で単位をそろえたら、4年目に行っていいよ」と伝えました。
Jさんは自分の稼ぎで子供の留学費用が出せるのか気になり、3年後の自分の収入を計算しました。
時給は950円で固定なので計算は簡単です。そして子供の留学費もアルバイト代で賄えることがわかりひと安心しました。
ところが安心したのも束の間、Jさんは「3年後、Aさんのお給料はどうなっているのだろう…」と、今まで心の奥にしまっていた気持ちが溢れ出してくるのを感じました。
そして、アルバイト開始から丸6年が経ち、初めて毎年7%アップの時給を計算したのです。
計算した結果、Aさんの時給は3年後に1,500円を超えることが判明しました。また、自分の方が役職が上で難しい仕事もしているのに、10年間の収入はAさんの方が200万円近く上回ることを知ったのです。
グローバル社会の影響2
JさんはAさんに対する悔しい気持ちもありましたが、何より過去の自分の判断(日本式を選んだこと)を後悔しました。
「今からでも雇用方式をアメリカ式に変えられないかな…」
藁にも縋る想いでAさんに相談すると、自分たちがアルバイトを始めたときは、アメリカ本社まで行き、書類を英語で書いて審査を受ける必要があったのですが、今は日本語のサイトから申請して2,3日で切り替えが完了するということがわかりました。
早速、Jさんは雇用方式をアメリカ式に切り替えました。すぐに時給はあがりませんが、3年後には1,150円を超える予定です。
今まで以上にモチベーション高く働くことができるようになりました。おかげでお店の廃棄は減り、スタッフの働きやすさも向上しました。本社表彰を受けてハワイに招待されるなど、充実した日々を過ごされているようです。
~おしまい~